岩政大樹は前を向いて歩き出す
田中 滋
岩政大樹は元気だった。“失格”の烙印を押されかねない韓国戦後の代表落選。しばらく代表のことを聞くのは難しいかと思っていたが、気分を害した様子もなく自らのプレーを厳しく断じた。
「いろんな人が難しい状況だったとかばってくれるけど、そういう場面で出場することを想定していた。言い訳にはならない」
岩政は日本代表に選出される前から、並々ならぬ決意とともにアピールを続けてきた。リーグ優勝したチームの中心選手である自負を背に、「中澤さん、闘莉王に挑むのは自分」と常に公言。見事に彼ら二人のバックアッパーというポジションを射止めたかに見えた。しかし、2月の東アジア選手権の韓国戦、闘莉王の退場を受けて出場したものの、代表2戦目の出場という経験不足もあり、持ち味を発揮することなく戦いを終えていた。
10分ほどの会話のなかで「悔しい」という言葉が出てきたのは一度だけ。だが、すぐに「選べる人数が少ないならスペシャリティーの僕を選ぶのは難しい」と言葉を続けた。
韓国戦があった2月14日、バーレーン戦の代表発表が2月25日と、ある程度の日数は経っている。その間に気持ちの整理はついていたのかもしれないが、その心境に至るまでに、さまざまな葛藤を乗り越えたことは想像に難くない。岩政は韓国戦が終わったとき、両ひざに手をつき、深く深くうなだれていたのだから。
落選についての愚痴や不満は一切口にせず、逆に自分と同じく代表から落選してしまった選手の心情を気遣ってさえいた。4月のセルビア戦で復帰できるかどうか分からない。不安な日々は続く。しかし、マイナスの心情に支配されることなく、岩政は前だけを向いて歩き始めていた。韓国戦の“悔しい”経験。それが生きる場面はきっと来るに違いない。